自恃があればよい

猟奇怪作珍作B級Z級映画や事件を雑に吐き散らしていく

【短編】デニス・ニルセンののドキュメンタリー感想「ニルセンを85分でまとめるんじゃない」【ネトフリ】

f:id:jijiarex:20220113121701p:plain

いや、もっと掘り下げんかネトフリ!!

 

単刀直入に云えばこの一言です。

ネットフリックスのオリジナル作品である、

『殺人者の記憶 デニス・ニルセンが残したテープ』の感想は。

f:id:jijiarex:20220113122600j:plain

 

淀川長治先生がこのようなことを生前に仰っていた、

「どんな映画にも必ず一つは良いところがある。僕はそれを見るようにしている」というようなことを。私はいつもその言葉を心がけています。

(心がけているのに記憶があいまいな件)

 

唯一良かったところは、被害者や被害者遺族たちに焦点を当てた点ですね。

 

犯罪、特に殺人事件に関心をもつ人たちは共感してくれると思うのですが、自分が大人になるにつれて、やはり、事件の被害者の存在は忘れてはならないものだと強く感じるようになりました。

当然ですが、被害者には生活も人生もあったのです。

この事実を私は常に頭の隅っこには置くようにしています。殺人鬼ものを嗜むときには。

 

この作品では、被害者やその遺族が事件当時のイギリスにおけるホモフォビアに非常に苦労して傷つけられたことが語られていて勉強になりました。無知な私に喝っ!

 

その感心とは裏腹に、作品を観ている間非常に気になったことが・・・

<上映時間85分>

デニス・ニルセンは独りの犯行なので、被害者の数のほうが多いわけですね。

(たいていの殺人事件はそうですが)

つまり、被害者に時間を割けば割くほどデニス時間が短くなるわけです。

当たり前田のクラッカーですだわな。

(Sさんへ、Sさんの定番のギャグ盗みました。)

 

この作品なんでリミテッド・シーズンにしなかったんだ!?!?

f:id:jijiarex:20220113125059j:plain

テッド・バンディみたいによぉ!!

(↑バンディのドキュメンタリーはどちゃ糞面白かったです)

 

<なぜ!?NAZE!?>

知名度の問題!?

 

ナチュラル・ボーン・キラーズ』でウッディ・ハレルソンが自分たち(ウッディとジュリエット・ルイス)のドキュメント番組の視聴率がチャーリー・マンソンの番組に負けて「マンソンは帝王だからな」って云ってたアレと同じ感じ!?

f:id:jijiarex:20220113140621j:plain

 

なんかレベル分けでもされてんのか?!

バンディには全4話分の金は出せるけどニルセンには出せない、とでも!?

バンディがスターでニルセンがモブ!?

ネトフリの職員ってペンギンなん!?

f:id:jijiarex:20220113141204j:plain

(ちなみにBBCの職員はペンギンです。モンティ・パイソンが云っていたから本当です。)

 

でもさ、ほら、デヴィッド・テナントがニルセンを演じるドラマが最近あったよ!?

f:id:jijiarex:20220113141959j:plain

アマゾンプライムの有料チャンネルで観れるらしい)

 

私の妄想?!

いやいや、あった。現実にあった。

あったのに85分かあ。

久しぶりに見ましたよ90分以内という映画。

私の好きなニルセンにかぎって85分とか・・・。

 

本編内でニルセンの肉声が収録されたテープが山盛り出てくるのですが、まったく活かしきれてないというか。

あんなにテープ残ってたら全4話とはいかなくても、

(バンディの場合は当時の映像が大量に保存されていたので4話分は作れたのでしょう。ネタも「事実は小説より奇なり」の如しですしお寿司。良くも悪くも確かに”スター性”みたいなモンはある)

全3話ぐらいは。お願いします。

 

<殺人鬼あるある>

先程も申し上げたとおり、私はデニス・ニルセンは好きな殺人鬼です。

それと、ジェフリー・ダーマ―。

何故このお二方が好きなのかと申し上げますと、孤独と葛藤が見え隠れするからです。

 

人を殺しておいて何が「孤独」じゃボケ!殺すぞワレ!

 

私もそう思います。

というか、殺人鬼ものを嗜むのに「何だかんだいってコイツは所詮人殺しだよな」という冷静かつ見下す視線はとても大事だと思います。

殺人鬼を崇拝するなんて愚の骨頂ですからね。

Nさんへ、Nさんの口癖盗みました。)

 

被害者の存在、殺人鬼を祀り上げない、この二点は念頭においています。

 

しかしながら、この名著を読まれた方はご存知だと思うのですが、

f:id:jijiarex:20220113144212p:plain

(ニルセンについての本)

 

ニルセンってとても複雑な人物なのです。

誤解を恐れずに云いますと彼は彼で孤独と葛藤にまみれた人生がありました。

 

本編にも映っていましたが、ニルセンは公務員であり職安で熱心に働いていました。

仕事を求める人達に対してそれはそれは丁寧にまじめに接していたそうです。

労働組合にも入って労働者の権利のために周囲に煙たがれるほど活動しており、さながら弱者の味方ですね。

しかし被害者のほとんどはその社会的弱者だった。

 

0か100かの性格のため人間関係はうまく行かず、ゲイバーは数あれど、本人の性格とホモフォビアな時代のせいもあってステディな恋人もできず。

(ニルセンの場合、本人のせい9.5割、時代のせい0.5割な気もするが)

しかし、「家庭」を作ろうと奮闘している姿もこの本の中では書かれています。

そんなニルセンが「家族」にしようとした青年がペットショップで子犬を欲しがるんですね。

その時にニルセンは彼にこう云い聞かせるのです。

「犬と云うのは責任をもって飼わなくちゃいけない。好き勝手に捨てるわけにはいかないよ。」

と。

犬や猫をペットを捨てる糞みたいな人間はこの人殺しの言葉を聞け!バーカ!

 

犬は殺さずとも人は殺す。

・・・。

・・・。

そ、そこは目を瞑っておくか。

f:id:jijiarex:20220113152045j:plain

(その犬はニルセンが逮捕されるまで大事に飼われていた。逮捕後は安楽死させられた・・・。)

 

ニルセンにはこのように非常に二面性が強い人物でもあるんです。

まあ、殺人鬼あるある探検隊ですけどね。

 

本編はこんな写真ばかり使用して、

f:id:jijiarex:20220113152340j:plain

(本編中こんな写真ばかり使われてた気がする。)

ニルセンを小馬鹿にする意図が見え見えでした。

わかり易い”悪者”に仕立てあげたかったのでしょう。その方が簡単で時間も短く済みますからね。

f:id:jijiarex:20220113144212p:plain

この本をまるまる一冊映像化するぐらいの気合いは見せて欲しかったです。

 

このドキュメンタリーの良かったところ:

①被害者・遺族に焦点をあてた。

②ニルセンの話声が聞けた。

③当時ニルセンの母親がインタビューに応じててびっくらこいた。

 

淀川長治先生、ありがとう。

 

f:id:jijiarex:20211221145135p:plain怪抱ぽんず