自恃があればよい

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【家庭環境】ゲイリー・ギルモア【もろ反映】

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まるで電動チェーンソーを振り回しながら走ってくるようなド迫力で迫ってくるノンフィクション小説「心臓を貫かれて」を読みました。年度末に一体私は何をしているのか。

<ゲイリー・ギルモア>

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こちらのチョットちゃらちゃらした優男っぽい感じの殿方。

写真を見た限りでは、二人の人間を殺害した殺人者には到底見えません。

彼が有名たる所以は殺害した人数ではありません。

魔物が住み着いているアメリカという国は、殺害した人数が一桁だろうと三桁だろうと、殺人者のバックグラウンドが興味深くないと誰も関心を持たないという恐ろしい国である。

 

彼が何故、有名なのか。

それは裁判所が彼に死刑を言い渡したとき、彼は上訴しなかったんですね。

むしろ死刑方法として銃殺刑を選ぶと主張しました。

ユタ州が自分に死刑を執行することを要求したのです。

これはアメリカ中で議論をよぶことになりました。

どうして彼は人を殺すことになったのか。

どうして彼は死刑を受け入れるのか。

 

<いつも君のそばに有る>

この本、

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いっつも本屋にありません?どこの本屋に行っても見かける気がするんですけど。

3月の3連休の初日に図書館に行ったらですね、また有ったので、

(勝手に)根負けしてつい手に取りました。

中身をぱらぱら~と読んで、「むむっ!?」と私の心の中の常に故障しているセンサーが働いてですね、借りることにしました。

ということで、3月の3連休はギルモア・ファミリーと過ごしましたよ(く、暗い…)

 

図書館で借りたので、文庫という選択肢がなくてハードカバー版を読みました。

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中身を開くとですね、

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上下二段

アメリカン・サイコ」か「銀河英雄伝説」か、ってなモンです。

訳者あとがき(村上春樹御大が訳しています)と訳注含めて全614ページ。

心が折れそうな音がしますが、ぐいぐい引き込まれて読みました。

 

<ギルモア一家の家族構成>

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J.K.シモンズ

あ、違った。

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オトンフランク・ギルモア

全ての元凶。結論でました。はい、解散!

いやほんま、これで終わっても良いのですがせっかくですから続けさせて下さいませ。

 

このオトンはなかなかの得体の知れなさで、若い頃はサーカス団員、

ハリウッドのスタントマンを得て詐欺師として生活費を稼ぐようになります。

オカンベッシ―と出逢った頃にはすでに、詐欺を積み重ねていた為にアメリカ中を転々としており、その上、何者かに追われていました…(お前は「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」か!)。

オトンを追っている者たちのなかには実の息子もおりました(意味が不明過ぎる)。

この実の息子も一体何人目の子供なのか不明なほど、結婚離婚を最低6~7回は繰り返しており、妻たちや子供たちは棄てて蒸発する常習犯。

(息子たちのうちの1人と何やら物凄いことをヤラかしたハズなのだが、その秘密は結局オカンが墓まで持って行ってしまい、一体何をヤラかしたのか、その一番の秘密は分からずじまいで本は終わってしまう)

オカンのベッシ―と結婚してからは、オカンや子供たちに折檻、折檻の毎日でBusyな日々を送る。

そんなオトンもやはり霊媒師の母親からの愛情を受けておらず(子供時代はほぼ母親に接しておらず、寄宿学校に放り込まれていた)、

「お前のほんとうの父親はハリー・フーディーニだよ」と100パー意味不明の嘘をつかれ、それを信じている為フーディーニのことが大嫌いである。

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(自分の知らないところでワケのわからん家族トラブルに巻き込まれるフーディーニ。
彼はそのトラブルから無事に脱出できるだろうか)

 

オトンの特技:

ギルモア家ルールをこと細かに作り、そのルールを少しでも破ると血の雨を降らす。

オトンの武器:

髭剃り用の刃を研ぐベルトの二重折り(身体に打ちつける時に痛さが増すらしい)、

ベルト、ベルトのバックル、お尻ぺんぺん、拳などなど。

 

 

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オカンベッシ―・ギルモア

このオカンも大概で、「お前なんか愛していない!」と子供を突飛ばしたらすぐに「ごめんねお母さんを許して!愛してる!」を繰り返します。

オトンがベルトで子供たちを折檻しているときには、17,18発目でやっと「もういい加減にしたら?」と止めに入ります。

(しかし、コレはこれ以上オトンの怒りを加熱させないための致し方ない処置かもしれない…虐待家庭にはよくあることかもしれない…)

 

彼女はとても気が強く(我が強い。なのでしばしば夫婦喧嘩のトリガーになってしまう。もちろんそのしわ寄せは子供たちに行く)、彼女の全ての原動力が私を白い目で見てた兄弟・姉妹たちを見返してやりたい!

「私だってちゃんとした家に住んで温かい家庭を作れるんだ!」になっている気がします。

しかし、彼女には同情せざるを得ない面があります。

もし、ケッコンした男がオトンでなかったらこのオカンは溌剌とした肝っ玉母さんとして人生を終えれたはずなんです。

 

オカンはモルモン教の両親のもと子沢山の家庭に生まれたのであるが、兄弟姉妹の中でオカンだけ家族で飼っていると同じ名前という。なんでさぁ~いちいちいちいちそんなことするかねぇ~親も、とこちらもやはりびっくりするほど100パー意味不明

(この本のなかでは様々なことが起こるのだがこの件はドン引きベスト5には入る)

勿論その牛は愛玩動物として飼われておらず、フツーに牛乳のためなのでザ・家畜なのである。家畜と同じ名前を子につけるって一体…

「牛と同じ名前を付けられた時点で彼女の運命は決まってしまったのかもしれない」的なことが本の中に書かれているのだが、誠にそう、というかナントイウカ。

 

私は「名は体を表す」という慣用句はあまり信じていないが、名前は大事だと思っている。

それは姓名判断的にという意味ではない。所謂DQNネームだろうがキラキラネームだろうがシワシワネームだろうが、親が子を想い名付けたのであればそれは良い名前だと思っている。

なのにって…(しつこい)

 

オカンは反抗心丸出しの少女に育ち(厳格なモルモン教徒の家庭ではオカンは異例の存在、異分子なんです)、都心(ソルトレークシティー)に出ます。

自分を白い目で見てきた家族たちをぎゃふんを言わせてやる!!そんな気持ちで一杯のなかオトンと運命的な出会いを果たします。

オトンの得体の知れなさには早々に気づいていましたが、一緒になることを決意。

 

先程、オカンには同情せざるを得ないと書きましたが、オカンもオトンに暴力をふるわれます。顔が変形するほど殴られたこともあります。

(そもそもオトンの詐欺旅行に強制同行させられるし)

離婚しなかったのは、当時はシングルマザーで生活していくのは現代より厳しかったという理由なのか、宗教上の理由なのかは分かりませんが…

オカンは結局はオトンのことを愛していたと、亡くなる前にインタビューで答えているんですけどね。

オトンが詐欺から足を洗い、事業を成功させた後、オカンがずっと夢見てた大きな家に家族で引っ越します。

しかし、オトンが亡くなった後、家を維持できなくなります(固定資産税とかね)。

 

オカンは末っ子のマイケルが大学入学を機に家を出て行ったあとで長男のフランクとトレイラー・ハウスに引っ越します(マイケルを悲しませないように家の維持を頑張っていたんですね。オカンはオカンなりに子供を愛していたとも云える。これは重要で、子供たちはオカンからの愛情は感じ取ってはいました)。

この時、「自分は一度死んだ」とオカンは言いました。

それに加えて、次男のゲイリーの処刑です。

完全に打ちのめされたオカンはそれ以降ほぼトレイラー・ハウスから外に出ず、身体が弱っても病院には行かず。周りの人間がいくら言い聞かせようとしても病院には行きませんでした。

やっと長男のフランクが救急車を呼んだ頃にはすでに手遅れ。オカンはそのまま亡くなってしまいました。

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(オカンとゲイリー)

 

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長男フランク・ジュニア

私はこの本を読んでいて、この長男のフランクが(ゲイリーが殺害した被害者を除けば)一番の被害者だと思っている。

まず、ギルモア家には門限や家事手伝いの厳しい鉄則があり、それを少しでも破れば(例えば門限に5分遅れる、庭の草刈りが一部分だけ完璧じゃなかった等)、オトン折檻が待っている。

しかし、子供である。

一生懸命にやっても完璧にはこなせない。すると、オトンから髭剃り用の刃を磨くベルトで鞭打たれる。

次男のゲイリーは早々に親に対する反抗心が芽生え、家のルールを破っていく。

すると、長男のフランクも連帯責任として二人同時に折檻される。

「悪さをした(オトンの金を盗む等)のはゲイリーだよ!」と伝えようとも、いいや、それでもお前を折檻するよとオトンにの約束をさせられる。

(「密告屋は嫌われるからな」by オトン)

という、どう転んでも何がどうなっても彼には折檻が待ち受けているのである。

 

夕飯時には夫婦喧嘩が勃発する頻度が高く、ご飯が食べれないことを覚えたフランクは、夕飯スタート時に素早く自分のお皿を目の前に持っていき夫婦喧嘩が始まる前にサササっ!と素早く食べようとするが、それを見たオトンに頭を掴まれビーフシチューの皿に押し付けられる。

 

フランクに手を上げていたのはなにもオトンだけではない。

オカンもだ。

フランクは実はオトンの実子ではない。

オトンの息子ロバートとオカンの浮気によってできた子なのだ。

(ロバートとオカンのほうが年齢が近い)

オカンはロバートの面影をフランクに見い出すのか、浮気した罪悪感ゆえか兄弟のなかで一番オカンに手を上げられていた息子だという。オトンにも折檻されるのに…。

(フランクがその事実をちゃんと知ったのは(不思議には思っていたらしい)だいぶ後。マイケルが行方不明だった彼を見つけ出した後です)

 

青年期になると、家を出て自分の所帯を持ちたいと思うようになったフランク。

とある、中国系アメリカ人の女性に恋をします。

その女性をオカンに紹介しようと、サプライズで家に連れてきます。

オカンは彼女を見た途端「その売女を私の家に入れないで!」と叫びます。

 

モルモン教は今現在はどうか知りませんが、映画やドラマで見る限り(人種的に)真っ白い宗教だと思いませんか?オカンは家に人を呼ぶのを嫌がる傾向が当時あったみたいですが、白人女性をすんなり家に入れているのを読んでいると、この中国系の女性に

対する言動にうっすらと人種差別の気を私は嗅ぎ取りました。まぁ、当時のアメリカの白人様はこんなもんでしょうし、今でも数多くいるでしょうね)

 

フランクと彼女はそれでも関係を続けようとしましたが、オカンの強烈な一言が二人の記憶から抜けないので結局別れてしまいました。

オカンはフランクは自分の世話をするための息子であり、自分の元から離れるなんて考えられないのです。

なので、彼の恋愛の芽を摘み取ったのでした…。

 

ニッポンでもおりますよね、時々。

「え?子供いないの?じゃあ老後どうするの?」とかほざくアンポンタンが。

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そんなとんちんかんはこの本を100万回読めばええんじゃないかな。

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大の大人になる頃には、オトンは死んでいる、ゲイリーは刑務所、ゲイレンは死んでいる、マイケルは自立して家を早々に出たという、オカンから離れる最大のチャンスが到来するのですが、真面目で誠実なフランクはトレイラー・ハウスにオカンを独り残していけないのか、オカンの世話をし続けます。

ゲイリーが処刑され、オカンも亡くなる頃には彼は40歳になっていました。

疲れ果てたフランクはそのあと姿をくらますのでした。

 

この本を読了したあと、一番に思うのは、今フランクは穏やかに暮らしているだろうかということですね。

幸せになって欲しいです。

 

 

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次男ゲイリー

本書の主人公と云って良いのかな?

オトンから折檻を受けているとき、長男のフランクは心をシャットダウンする技を身に付けます。

騒げば騒ぐほどオトンの折檻が酷くなるからです。

しかし、次男のゲイリーはいつも泣きわめいてしまいます。するとますますオトンの暴力は止まないのでした。

因みに、オトンは自分の息子ロバートとオカンが浮気してできた子はこのゲイリーだと思っていたのです(実際は長男のフランク)

だから兄弟のなかで彼に対する折檻が一番キツかったといいます。

 

そもそも、この世に誕生した時から波乱万丈でした。

ゲイリーが生まれる前後、オトンは妊娠中のオカンを連れて詐欺を繰り返す旅をしつつ、何者かに追われていました

オカンはテキサスで彼を出産するのですが、出生届の名は”フェイ・ロバート・コフマン”という、オトンの母親の名+オトンの息子の名(オカンの浮気相手)+コフマン(詐欺を働くときの名)で、”ゲイリー・ギルモア”としての出生届はありません。オトンとしては自分たちの身元が判明するのを恐れた為でした。

(後年、ゲイリーはこの出生届をギルモア家で見つけて「俺はやっぱりこの家の子じゃなかったんだ!!」と勘違いをしてしまいます)

 

そしてオトンは産まれたてのゲイリーをベンチに置き去りにして、不渡り小切手を切っているところを警察に捕まってしまいました(ちゃんと刑期を勤め上げ出てきますが)。

は?

もうワケが分からないのでページを捲る手が止まりませんでしたよね。

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とまあ、そんなこんなで無事に不良少年となったゲイリー。

今までは両親に振り回されっぱなしだったが、今度は彼が家族全員を大いに巻き込んでいきます。

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愛情不足のトルネードです。(イメージ図)

酒、ドラッグ、窃盗、喧嘩、未成年不純異性交遊、学級崩壊!

ほんとね、子供の頃から暴力を受けているとどう育つのかという見本みたいな人なんですよ彼は。

(しかし、死刑が執行される直前のインタビューでは中学校の新任教師のことを尊敬していたと証言しています)

 

学校は早々にドロップアウト、少年院に入ったのを皮切りに人生のほとんどを少年院・刑務所で過ごします。

ゲイリーはムショの面会で長男のフランクにこう言います。

「看守や所長を見てるとなあ親父を思い出すんだよ!」と。

つまり、彼は、私が思いまするに、少しでも”権威”を感じる存在には自分を虐待してきた父親を重ねてしまうんですね。

そんな相手や(社会の)規則に対しては反抗するしかないんです。

せざるを得ない。立ち向かっていかないと、自分がやられる…そう感じてしまうんだと思います。

(オトンに対する憎しみは処刑直前まで続きます

 

ゲイリーはですね、普段からの不摂生がたたってか(酒とドラッグをやってる人は毎日寝る前に歯磨きとかせえへんやろし)けっこう若い内から入れ歯なんですよ。

その入れ歯をめぐってですね、刑務所内でも暴れていきます。

(けど、入れ歯が合わないと歯茎が痛いらしいのよ。これはさすがに人権問題じゃね?)

まあ、入れ歯以外でも暴れていくのですが少々割愛。

 

しかし、

中年期になると、もはやなんで自分がこんなに暴れているのかワケがわからなくなっていたのではないかと私は思っておる。

(刑務所内で自殺未遂を繰り返すし)

というか、ゲイリーって刑務所じゃなくて精神病院で「どうしてこんなに暴力的なのか」診察してあげて欲しかったですね。彼に必要なのは心のケアと混乱した頭の整理。

誰かがそう判断してくれていたら被害者たちも殺害されなかったでしょう。

彼の生涯には重要な仮釈放期間が二度、訪れるのですがそれはまた後述

 

 

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三男ゲイレン

「家にアホが二人(オトンオカン)いるせいでまともに夕飯も食べれない」と泣いていた三男のゲイレンのエピソードもキツイです。

(ここの兄弟全員キツイのであるが)

ゲイレンは上の二人とは少し歳が離れており、オトンのお気に入りの息子でした。

しかし、その後、末っ子のマイケルが誕生してからは格下げ

上の兄二人と同様、オトンからの折檻が始まります。

一度は父親からの愛情を目一杯受けたのに、拒絶されたのです。

(ワタシ・コレ・トテモ・キツイト・オモウ)

その時のこの子の心情を思うと…。

・ ・ ・ ・ ・ 。

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(本来は1メートル。涙を出し終えると3mmに萎みます。足の裏によく付いてますよ)

ゆえに、幼少時はマイケルに対してキツく当たっていたようです。

(玩具を斧でぶった切ったり)

そのうえ、一時期体型がぽっちゃりだったようで、そのことでもオトンから馬鹿にされます。

大きくなるにつれ、ゲイリーに憧れだしたのか彼もグレていきます。

しかし、ゲイリーほどマジもんではなく、街のチンピラといった風。

彼の一番の問題はアルコール依存女癖の悪さ。

十代のかなり早い段階から酒を大量に呑み続け、ルックスが良いもんだから女性にもモテます。

そこで独り身の女性と付き合えば良いものを、彼はどうやら度々夫や彼氏持ちの女性に手を出すのでそっち関連のトラブルが絶えなかったようです。

(次男のゲイリーの彼女にも手を出した)

それに、アルコールを飲むと盗み癖があるようです。

(オトンが亡くなった後、オトンの会社の金を横領。家族の口座からも無断で度々金を引き出していたそうな…家族の金を使い込んだら自分自身も困るのにねぇ?(;^ω^))

それとギルモア家といえば「不渡り小切手」を切る必殺技。これらのコンボにより、

すでに地元には居づらくなったのでしょう(ていうかとある郡から逮捕状も出てしまいました)。

とある夜、家でウォッカをがぶ飲みし、オカンに「金くれ!!」と言って金をむしり取ったゲイレンはそのままシカゴに逃亡

その逃亡生活のなかでまたもや夫持ちの女性に手を出し、その女性の夫に腹を刺され、家族の元に帰ってきたころにはその傷が原因で体調が悪化しており、なのに酒を呑み続けるもんだから治るのも治らない状態。

過去のことは反省し、性格はおだやかで優しくなっていましたが亡くなりました。

 

 

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末っ子マイケル

この本の著者。

上の兄たちとはだいぶ歳が離れて生まれてきた子。

三人の兄・オトン・オカンの5人家族だったときは、ギルモア家は(オトンの詐欺ゆえ)一定の住所に留まれずにアチラへ、コチラへと点々と移動しており、その日暮らしをしておりましたが、マイケルが生まれる前後にオトンが詐欺から足を洗います。

オトンが建築関係の専門書みたいなガイドブックを出版するという仕事をしだして、またその事業がなかなかの成功を納めます。

なので、マイケルは他の兄弟と違って、金銭的に余裕が出てきた頃に誕生したのです。

そのうえ、オトンも歳をとって丸くなった(&息子たちが大きくなって今まで通りの折檻が出来なくなったのもあると思う)ので、少々オトンも大人しい状態。

且つ、マイケルがまだ小さい故オトンに反抗しない。

様々な条件が重なって、マイケルは兄弟の中で唯一オトンから折檻を受けていない息子なのです。

 

マイケルは貧乏暮らしをしておらず、オトンには溺愛され、他州にオトンの会社の支部があるため1年の半分はオトンとの二人暮らしです。

 

そのことで家族の中では異質の存在。他の兄弟とは一線を画され(年齢の問題も大きいけどね)、マイケルは自分も家族と放浪生活がしたかった、オトンから暴力を受けて兄弟たちと同じ経験がしたかった等々と相反する気持ちで心がかき乱されます。

 

まあ、かといって、オトンとオカンの夫婦仲最悪なのは絶賛続行中なので、両者から「パパとママどっちと暮らしたい?」

と、地獄ような質問を受ける。

怒りで目が吊り上がり狂人のような顔つきをしたオカン、有無を言わせない無言の圧力をかけてくるオトン

丸く収めるためにマイケルはオトンを仕様がなく選びます。

するとオカンは泣くのでした。

オカンを慰めようとすると、「私のことなんか嫌いなくせに!」と突き飛ばされます。

 

オトンが病気でそろそろヤバいとなったときには、オカンから「オトンがどんだけ憎いか」というハナシをこんこんと聞かされます。

マイケルは確かに肉体的虐待は受けてないかもしれない、しかし、精神的虐待は受けていますね。

 

このコはですね、兄弟の中で唯一大学へ進学。音楽関係の記者になります(ローリング・ストーン誌とかの)。

ゲイリーが死刑執行をユタ州に要求していた当時、兄弟として政治的スタンスとして死刑には反対しておりました。

”記者”である人脈を使ってあらゆる手で執行を阻止しようとしますが、

長男フランクから「子供のときから暴力を受けてきてそのままずっと刑務所で生きてきた人間に、これからも死ぬまで刑務所に云々」と、とても説得力のあるハナシを聞かされて(ぽんずよ、そこを書けよ!)納得するしかありませんでした。

ゲイリーの処刑後、彼自身が想定してた以上に精神的ダメージを喰らい一時期とても落ち込みますが、行方不明だった長男のフランクを見つけ出し、二人で記憶の欠片を埋めていきこの本を書きあげます。

 

<更生の道はありました>

ゲイリーにも人生をやり直すチャンスがありました。

(ゲイリー・ギルモア作)

彼は子供の頃から絵を描くのが上手かったんですが、刑務所でもその才能を認められ、当時は模範囚だったこともあり、彼を更生させようと刑務所側は決めます。

(当時は三男のゲイレンが亡くなって、それがショックで大人しくなっていたみたいです)

大学に彼を通わせ、美術の授業を受けさせようと計画されました。

ゲイリーも承諾します。

これで、オカン、マイケル、長男のフランクも安心しました。

しかし…

当時ゲイリーには「刑務所の恋人(プリズン・ラヴァ―と云われるらしい)」(同じ時期に収監されていた囚人たちの証言による)がおり、

(バリー(仮名)という。しかしゲイリー自身はこれを強く否定)

そのバリーさん、歯の治療が必要で刑務所の外の病院に行く必要があったんです。

ゲイリーはバリーに歯の診察日と、自分が行く大学の履修登録期間を合わせるようにと言います。

彼には計画がありました!!

大学に着けば自分は既にかなりの信用を得ているため監視の目がゆるくなります!

履修登録をしに行くときには自分ひとりです!

末っ子のマイケルには銃の手配を頼みます!

(自分のことを愛しているので頼みを聞いてくれるでしょう!なんせ兄弟ですから!)

銃が手に入ったら、病院に行ってバリーを奪還して二人で逃亡します!!

お前はアホか!!

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逆にすごい!なんでそんなことを思いつく!!?

結局、ゲイリーは履修登録期間中に酒を呑んでしまい、ドラッグやってぐだぐだになってしまいます。

というか、そもそも、バリーにとっては完全に有難迷惑な計画なのであっさりと裏切られ密告されていたのでした。

マイケルも当然のごとく、銃の手配を断りました。

ゲイリー、捕まりました。

(「フィリップ、きみを愛している」よりひどい)

 

<更生の道はありましたpart.2~殺人>

ゲイリーはまたもや服役態度が良好になり&オカンが老齢で命の危険があったため、彼は州オレゴンの矯正局に「心を入れ替えます」と何通か手紙を送ります。

(汎用性が高い画像)


オカン側の親族もゲイリーを受け入れることを快承諾したので、ユタ州の親族の元に身を寄せることを条件として仮釈放されます。

この親族さんたち、ゲイリーに仕事と家を用意してくれました。

新しい人生を歩む彼には恋人まで出来ました。

名はニコル。子供が二人います。

 

しかし、また酒を呑み始め薬も飲み始めます。

アンタ、バリーんときもそうやったやんか!!

この薬というのはどうやら裏道で買うドラッグではなく、市販薬(?)で筋肉痛と頭痛の薬なんですけど、

常用すると感情の振幅が激しくなり、性的機能障害が生じることがある。

とのことで、その両方の副作用をもろに喰らったらしいんです。

セックスがうまくいかないことでニコルを殴るようになり、仕事も辞め、また暴れまわるようになり、家に銃も置くようになります。

(この薬は必要だったから飲んだのか、ハイになるために飲んだのか本には書いてないのでよく分かりませんが、そんなに強く副作用が出るなら服用を止めるなり、違う薬を薬剤師に相談できたはずなのでは?そんな選択肢を思いつけなかったのかもしれませんが。

(もしかしたら、ノーマン・メイラー著の「死刑執行人の歌」には詳しく書いてあるのかもしれません)

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(こちらもゲイリー・ギルモアについてのノンフィクション本。本作より前に出版されいます。親族ではなく他人が書いているので感情過多とも云える本作より事実を淡々と述べていそう。私が次に読みたい本です)

あと、酒はリラックスできるけどゲイリーみたいに重度のトラウマが抱えている人が呑むのは諸刃の剣ではなかろうか)

 

ニコルは子供を連れて出ていきます。

(偉いぞニコル!!この件に関しては一切ゲイリーには同情できまへんがな!)

 

彼女と何とか復縁を試みますが、彼女は拒否(そりゃそうだ)

ゲイリーは「ニコルを殺す」と知人に言います。

その後彼はニコルの母親の家に行き、ニコルの妹を誘ってドライヴ。そのドライヴ先のガソリンスタンドで従業員の青年を射殺。

「これは俺の分」、「これはニコルの分」と言って二発撃ちました。

 

翌日、自分の世話をしてくれた親族の家からたった数軒となりのモーテルに入って行ってまたもや従業員の青年を射殺しました。

被害者の青年二人はどちらもモルモン教徒でした。

 

目撃者がいた為、ゲイリーは逃亡しようにもすぐに捕まってしまいました。ニコルの家の前で逮捕されたそうです。

 

このグダグダ感は何なんでしょうね。最後の方は自分で何をしているのか、何をしようとしているのか分かってなかったのかもしれない…。

あまりにも衝動的過ぎる。し、

過去に問題行動(自殺未遂も何度もやってんよ?)を繰り返してきた人物を、よくもまあこんなに簡単に(自由度の高い)釈放できるな、という。

もっと条件つければ良かったのになあ(カウンセリングに通うの必須とか)。

この人、破滅型やん?ていう。という。ていう。という。ていう。

 

死刑を要求している時にゲイリーは末っ子のマイケルに面会で言うんですけど、

「もう刑務所の中で残りの人生を過ごすのはごめんだ」云々かんぬん…

要約すれば「自分の人生を終わらせたい」ということなんですけども、

結果的に”他人を巻き込んだ自殺”ですよね。

被害者は当然報われない、ゲイリーだって子供のころからの人生を考えたら報われない。ここの葛藤感は読む人によって色々と違うと思います。

 

あと、ゲイリーには実の息子がいるんですね。彼が若い頃にできた子なんですが。

しかし、その息子の母親側の家族もゲイリーのオトンとオカンも無事に出産が済んだことを秘密にするんです。

彼は処刑され亡くなるまで「赤ちゃんは死んだ」と思い込まされていたわけです。

これがもし、息子に関わっていたら、虐待を繰り返すのか、もしくは更生していたかもしれません。どうなっていたかは分かりませんが…。

 

モルモン教

先程言及した通り、オカンはモルモン教なのですがコレがこの本では重要になってきます。

所謂、アメリカの開拓時代に多くのモルモン教徒たちはイリノイ州ノーヴ―という街に住んでいた(というより信者たちが国内海外から問わず集まって来ていた)のですが、プロテスタントカトリックからすればモルモンって同じイエス・キリストを信仰するにしてもちょっと特殊。早い話、信者たちは迫害されていました。

モルモン教徒は公共の敵!」、「アメリカ中西部を支配下に置こうとしている!」等々とまあ色々言われていました。

我慢ならなくなった人たちは、モルモンの創始者であるジョセフ・スミスを捕まえ、小さな町の監獄に拘留します。

「生きては返さぬ!」ということで、暴徒と化した人たちは監獄に押しかけます。

そこには一応守備兵がおりましたが、そもそも守備兵たちと暴徒の人たちって街中では知り合いなので、守備兵もジョゼフ・スミスを守る気ナッシング!

いざ!我らの掌中に!

ジョゼフ・スミスは窓辺に逃げ下へ飛び降りようとしますが、下にも暴徒が。

そのとき下から銃弾が何発か発射され、彼はそのまま地面に落ちてしまいます。人々は彼の身体を引きずって違う場所に移動。

銃で改めてジョゼフ・スミスの心臓を撃つのでした。

(この暴動のキッカケはイリノイ州知事の出頭命令なので、州ぐるみの暗殺なのでは…)

 

モルモン教徒たちは新たなリーダーと共に18カ月かけてイリノイ州からユタ州ソルトレークシティーに移住。

(現代でも州民の約6割がモルモン教徒。政治面でも同様)

信者たちもホっと一安心。新生活の始まりです。

しかし、今度はアーカンソー州からカリフォルニア州へと向かう移住者たちの集団ユタ州の南部でひと休み。

ま、それは良いんですが、その中のひとりが「カリフォルニアに着いたら軍隊を組織して戻って来てやる。んで、生き残りのモルモン皆殺しな」とイキりよるんですわ。

いちいちいちなんでそんこと言うのかねぇ~ほんまに。

んだら、モルモン側の自警団も黙っておられまへんがな。

自警団はネイティブ・アメリカンたちと交渉し、協力してこの移住者の集団を皆殺しにしよったんや。

(1グループに1馬鹿がいるだけで簡単に殺されてしまう時代ですわ!!)

この”マウンテン・メドウズ虐殺事件”を重く受け止めたモルモン側。

事件の全責任を自警団の有力メンバーのひとりであるジョン・D・リーひとりに負わせ、(恐らく他州に向けての生贄のために)モルモン側の銃殺隊によって処刑させよんねん。

ジョンは「心臓をしっかりと狙ってや。身体に余計な傷つけんといて」と言ってな、銃殺隊はその通りにしよってん。

 

モルモンでは「血の贖い」という、己の血を大地に流すことにより神に謝罪するという教義がありまして…

この辺り、ネットで調べていくとドツボにハマっていくのでアクマでも「この本ではそういうこと」と思っておいてください。

まあ、血を流して罪を贖う、という。

 

モルモンの歴史上でこの大きな二つの出来事と、ゲイリーの処刑後にオカンが長男のフランクに言う「あのろくでもないモルモンどもは、私が憎いから、かわりにゲイリーを殺したのさ。あいつらがおまえの弟の心臓を撃って地面に落としたんだ」という文言がこの本のタイトルである「心臓を貫かれて」の由来となり、

ゲイリーが死刑を受け入れ銃殺刑を選択したのは(しかもモルモンの歴史が深く根付くユタ州で)、「血の贖い」という教義が本人の意図しないところで関わってくるんですね。

(けど、オカンが子供たちに繰り返し繰り返し話してたそうだから、潜在意識下にあった可能性は無きにしも非ず)

「あいつらがおまえの弟の心臓を撃って、地面に落としたんだ」

特にこのフレーズは何度か出てくるので、読了後も強く記憶に残りました。

 

<その大団円たるやカタルシスのごとし>

この本はですね、

迫害されてきたモルモン教徒の歴史、

モルモン教徒自警団による信者同士の殺し合い、

ジョゼフ・スミスの処刑、

モルモン教の「大地に己の血を流す」ことで贖罪されるという教え

ユタ州の死刑制度復活、

ギルモア家のアウトローの血筋と家庭崩壊、

マイケルが右も左も分からない素人ではなく、駆出しであっても”記者”であったこと、

 

全てがゲイリーの処刑へと終結していくんですよね。

 

陰謀論者であれば「なんか仕組まれとんのか!」と声をあげたくなるでしょう。

これもマイケル・ギルモアの構成力の成せる技なんでしょうが、この人はほんと、家族の暗くて暴力の歴史を浄化させるために、この本を書くために、記者になる運命だったのではと運命論も飛び出す始末ですよマジで~

兄弟のなかで一人だけオトンからの折檻を受けてないという点も、家族を冷静に見れる大きなポイントだと思うんです。あと、記者という職業の人脈があったからこそ長男のフランクを見つけ出して、この一世一代の今作が書けた…

どう思いますか?(知らんがな)

 

<血は水よりも濃し>

このことわざ私は苦手なんですけどね。

(私の周囲の環境が悪いのか、良い文脈で使われているのを聞いたことがありません。身内をいじめる口実でしか使われていない気がするんだが)

 

しかし、今作を読んだら家族って何だろう?

脈々と受け継がれていく遺伝って何だろう?血筋って何だろう?

と、思わずにはいられなかったです。

親が死んだときに子供たちは泣くんですよね。虐待されてきたのに。

ゲイリーなんてあんなにオトンから折檻されてきたのに、オトンが亡くなったのを聞いて自殺未遂するんですよね。

あとこれは、この「ギルモア家に限ってはそうだった」としか云いようが無いんですけど、結局はなんだかんだと云っても一つ屋根の下に帰ってくるというか…。

 

家族という集合体のって深いぞなもしなぁ~

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(ごま油で炒めると香ばしくて美味しいです)

 

<補足>

他に重要な怪異話がこの本の中で度々出てくるんですけど、すんまへん割愛します。

ギルモア家はオカンのウィジャボードから始まり、家族全員で心霊体験をするという、家族の歴史、モルモン、殺人、幽霊と何層にも重なって大河小説か須佐ホルンフェルスかっ!ぐらいの勢い。

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(断崖絶壁な須佐ホルンフェルス。山口県に行かれる人は是非!)

NHKの朝の連ドラでドラマ化したらいい!!

(暗すぎて視聴率ガタ落ちしそう)

 

f:id:jijiarex:20211221145135p:plain怪抱ぽんず

禁断の1万字越え…書いている間、私は何をしているんだろうと思った…