自恃があればよい

猟奇怪作珍作B級Z級映画や事件を雑に吐き散らしていく

【時間との】ラ・ヴァレ【戦い】

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ピンク・フロイドは言いました。「谷はどこ?」かて。

1972年制作、音楽ピンク・フロイド、監督バーベット・シュローダーの「ラ・ヴァレ」を観ました。

パスカル・オジェの検索で引っかかった映画「ラ・ヴァレ」を発作的に手にしました。

 

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パスカル・オジェは残念ながら25歳の若さで急逝したフランスの女優です。

エリック・ロメール監督の「満月の夜」が有名でしょうか。

声がハチャメチャに可愛くて好きです。

 

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フランスの出版社から2018年に写真集が発売されていて、日本でも洋書を取り扱うお店で販売されていたらしいのですが、ワイが気づくの遅すぎましたね。

気長に手に入るのを待つことにします。

 

というわけで、

あまり深く考えずに「パスカルたんは1958年生まれだから十代の頃に出てたのかな?」

なんて呑気に構えて観始めました。

それがどんな冒険になるとは知らずに…

 

<はい、観ます~>

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びゅおおお~~~ううう~~~~おおおおおお~~~

…タン…タン…タン…

という不穏な音楽はしょっぱなからピンク・フロイドでしょうか。

とても雰囲気抜群の音楽です。

 

ニューギニア島の奥地に

1954年にオーストラリア人が発見したという

地図にも書かれてない未開の土地があるという

道もまったくなく 人跡未踏の地

 

はいはいはい、そこがLa Vallée! すなわちThe Valley、

目指すべき でございますのよねぇ!!!わくわく!!

(と、この時点ではまだ呑気に構えていたぽんず…)

 

む?

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主演は…

ビュル・オジェ!

ビュル・オジェはパスカル・オジェのお母さんです。

そうか…”オジェ”で検索に引っかかったのか。

 

ビュル・オジェは世紀の大傑作セリーヌとジュリーは舟で行く」の、超不思議な家に住んでいる並行宇宙線上のブロンドの女性役が私のなかで印象が強いです。

(↑「セリーヌと~」観た人は分かってくれるハズの説明)

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右のブロンドの女性がビュル・オジェ。

真ん中の男性がなんと、本作の監督ことバーベット・シュローダー…

(本作ではフランス語読みのバルべ・シュローデル表記)

本記事を書くまで知りませんでした。

 

そして、バーベット・シュローダーは「バーフライ」の監督でもある。

(ビックリである。この人、職人監督か!?)

 

そのうえ、バーベット・シュローダーはビュル・オジェの長年の夫であるのでした。

パスカルの実父ではない)

 

因みにビュルとパスカルの母娘は「セリーヌと~」のジャック・リヴェット監督のこれまた不思議な世界観の「北の橋」で共演しております。ダブル主演です。

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この母娘についてはまたの機会に書きたいです。

ビュル・オジェは年を重ねてからの佇まいがとても素敵な女優です。

 

<谷とは>

そんなビュル・オジェ扮する我らがヒロインこと、ヴィヴィアーヌはひょんなことから青年オリヴィエと出会います。

ヴィヴィアーヌはメルボルンのフランス領事の妻という、裕福な家の人なのだが自らビジネスも手掛けており、その仕事というのが”エキゾチック””異国風”なものを買い付けてパリに輸出して販売してる…みたいなバイヤー的なもの。

(うろ覚え過ぎだろ!)

 

個人的にハマっているのが珍しい鳥の羽らしく、その羽を青年オリヴィエが持っていると知ったヴィヴィアーヌは青年が今とこ暮らしているテントに向かう。

 

青年オリヴィエは女二人、子供一人、ロン毛のリーダーと暮らしていた。

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(さてはヒッピーか)

 

テントの中に入ると、

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裸体が。ロン毛のリーダーと女のうちの一人の事後であった。

(これが噂のフリーラヴというやつか)

 

ヴィヴィアーヌは戸惑う(そりゃそうだ)

しかし、羽が欲しくてたまらない。ここは辛抱して羽を触らせてもらいます。

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この場面を観ているとき、背後にあえぎ声が聞こえて私は何度もイヤホンを外して、自分の正気を確認していたのですが…

 

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やっぱり裸体の二人がヤってましたね。

私の耳がクローネンバーグ化しているのではなかったです。

 

さてさて、彼らは"谷"を目指しているとのこっとっ~♪

ロン毛のリーダーがヴィヴィアーヌに説明するところによると、

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そのとやらは快適過ぎて離れられない場所でありあまりにも快適過ぎて

もはや途方に暮れて、

どこかに行こうとすると谷に落ちる呪いがかかるという…

谷に残れば残ればで時間が変形し楽園=谷と一体化するという…

 

もはやホラーSF!!

惑星ソラリス」か「サザーン・リーチ」シリーズか!ってなモンで早く行けーー!!

この連中と行くんだヴィヴィアーヌ!

快楽に満ち足りて土地と一体化する様をどう映像で表現するのか視聴者にはよ見せぃーーー!

 

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ひとまずセックス。

なんで?

 

<谷へと出発>

そんなこんなで、ヴィヴィアーヌは羽をGETしたいこともあり彼らについて行きます。

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そうこなくっちゃ

 

コーフンしてきましたぞぉ~!ウホウホ!なぽんずでありました。

この時はまだ…

 

道中ヴィヴィアーヌは川をお風呂代わりにするのも、野道でウンコ・シッコするのにも困惑します。

(映画的には彼女は上流階級だからだ!みたいな風に撮られてますが、現代の”趣味がソロキャン”の人もこの環境には戸惑うと思うなあ…)

 

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山奥の部族たちのお祭りにも遭遇します。

このお祭りのシーン、長かった…谷はまだまだ遠い我慢我慢…

 

やっとお祭りコーナーが終わり、

(こんな奥地でも監視?している機関があってヴィヴィアーヌが何かの羽を受け取ったときに厳重注意されていましたね)

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すごい道を車は走っていきます。

 

ヴィヴィアーヌが欲しそうな羽、それはとある呪術師ならくれるかもとの情報を得て一行はその場に寄ります。

 

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呪術師のおっちゃんは彼女の心だか精神だかに侵入?霊視?透視?何でもいい、します。

 

すると彼女の心の中の風景?に、

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何かおる。魔法陣グルグル

 

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二匹おる。

 

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来る。

 

ええ~なになになに~~~!!!と視聴者がはわはわしていますと、

カメラが横に流れ、

 

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いっぱいおる!

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ヴィジュアルが素晴らしい!!!

 

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今回のサムネ野郎!

 

いいよぉ~!いいよぉ~!その調子!(*´Д`)ハァハァ

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私のなかの篠〇紀〇がうずきます!

 

この一連のシーン、後から分かったのですが呪術師がヴィヴィアーヌの心の中に入って行ったのですね(多分)。そして、彼女はひるまなかった。

なので、見事に羽を勝ち取ったヴィヴィアーヌなのでした。

 

ピンク・フロイドはじまた>

まぁ、そんなこんなでやっとこさ、ラリるコーナーが始まります。

 

旅の仲間たちが怪しい儀式を始め、とても怪しい飲み物をヴィヴィアーヌに渡します。

オリヴィエ青年が止めるのも聞かず飲むのでした。

(何かが彼女のなかで目覚めようとしています)

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(コロナに恐怖する令和の我々には信じがたい回し飲みなのであった)

 

あっ!ピンク・フロイドはじまる!

 

そう思った瞬間、音楽に合わせヴィヴィアーヌは太鼓を叩いていました。

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あぁ~…これはもう…ピンク・フロイドだわ…

ヴィヴィアーヌは「月…」「水…」とか言いだします。もうダメです。

(「子宮…」とか言わないだけマシですが)

 

終いには木に「木だわ」と言います。

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「木は動いている」のだそうです。ここまでくるともう救えません。

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祠…楽園…クムルの巣…ぶつぶつ

(ビュル・オジェも大変である。いくら夫の映画とはいえ)

 

あんなに苦手だった蛇にもナデナデします。

(私も怪しい飲み物を飲むとネギが食べれるようになるかもしれません。ネギ・ピーマン・パプリカ・しゃきしゃきのタマネギ・人参・とんかつ・揚げ物・甘辛な料理全部・お好み焼き等々…この世の食べ物が全てラーメンネギ抜きと白米になったら良いのに…)

しかし、正気に戻った瞬間「ぎゃああああ!」と投げ捨てます。

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(人間のエゴに振り回される動物たち)

 

<旅はつづくよ…どこまでも…>

そのあと、ヴィヴィアーヌは一旦帰ろうとするのですが再び決心をして一行に加わります。

因みにこの時点で鑑賞しだしてから53分13秒が経ちました。

本作の上映時間は1時間41分1秒であります。

・ ・ ・ ・ 。

大丈夫かこの映画。このとき初めて不安に思ったのでした。

 

そんなとき、ヴィヴィアーヌが相思相愛だと思っていた青年オリヴィエが仲間の女とヤリかけていました(もしくはヤッている途中なのか。そんなことはどうでもいい)

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(よくそんな虫だらけであろう場所でヤれるね、ていう)

ヴィヴィアーヌはショックのあまり「もう帰る!!」と言います。

(待て待て!映画はあと40分程しかないんだぞ!!)

 

ていうか、この人たちは「特定の相手はいない。メンバー同士ヤってる」ってオリヴィエが言うてたやん、アンタに。

 

そんな彼女を慰めに、オリヴィエとイチャイチャしていた女が追ってきました。

女は彼女に言います。

「愛とはもっと大きなもの。あなたの愛し方は自分が喜び、満足するためのもの。

彼のじゃない。自分だけが得をして相手に与えてないの。

海を考えて。海こそ大きな愛。海に水を入れた小さな瓶を投げると沈むわ。

その瓶があなた。それを割ればあとに残るのは海だけ」

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分かる?

 

私には抽象的で難し過ぎましたが、ヴィヴィアーヌは理解し、彼女と抱き合います。

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マルチ商法にハマる人ってこうやって落とされるのでしょうか?

ネットワーク・ビジネス系の人たちはカフェでカモを口説いておられるらしいので、皆様も聞き耳を立ててカフェオレを飲んでみましょう。

 

さて、

泥の河を車を押して渡り、

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(過酷なロケ過ぎる)

 

密猟者の男二人から馬を買い取り(ヴィヴィアーヌの手持ちの財産はここで尽きました)、さらに奥地へと向かう面々。

 

そしてコンボガ部族という人たちに出会います。

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コンボガ部族は近場の部族も呼んで祭りを始めます。

(これ、また長いやつや…そう思いました)

 

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旅の仲間たちも参加します。

 

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部族の人たちが何やら料理をする準備を始めたので、「ヴィヴィアーヌおまえ食べられんのか?」と思いましたが、

それは昔「食人族」

   今「グリーン・インフェルノ

 

ということで、豚さんたちが調理されていました。

ちょっとここのシーンは衝撃的でしたね。「命を食べるとはこういうことなのだな」と思いました。

 

そしてこの祭りの一連のシーンが(予想通り)長い

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いきなりのメタをはさみつつ

(この人たちは撮影隊のためにこうして歓迎してくれてるんだよな。有難いですよほんと)

長い

この時点で1時間22分30秒が経過しました。

焦ります。私が。

テンポの良いハリウッド映画に慣れている現代っ子のワイにはキツ過ぎる!!!

 

そんな中、独りだけ憂鬱そうにしている青年オリヴィエの傍に興奮しきりのヴィヴィアーヌがやってきます。

ヴィ「素晴らしいわ!彼らと親しくなれた!ここに真実がある」

「逆だよ。俺たちはただの観光客だ」

 

いきなりマトモになった青年オリヴィエは、ここの部族は厳しい掟の上に成り立っている社会で生活をしている。自分たちはその逆を求めているはずだ。彼らを理解できたなんて言う自分たちは嘘つきだ、と。

 

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そうなんですよね、文明人とやらはこういった上半身裸で暮らしているような民族や部族を暗に見下していて「この人たちと友情を育めた、理解できた自分」に酔いしれる傾向がある。本作に出てくる”部族”のような人たちじゃなくても、裕福じゃない国やそのような国の地域の人たちに対しても、ですね。

なかにはほんとうにその土地で一緒に生活していく人もいますが。

 

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(オリヴィエって”デニス”の”のぶ君”に似てる)

ヴィヴィアーヌは青年オリヴィエに反論をするのですが、”素朴”というキーワードに見下し傾向有りですね。アウト―!!

 

1時間28分3秒経過。

(本作の上映時間もう一度いいます。1時間41分1秒でございます)

 

議論してる場合じゃないだろ!!

谷に着いてから好きなだけしろ!

 

╰⋃╯チ〇ポ╰⋃╯

覚醒してしまった青年オリヴィエを放っておいてヴィヴィアーヌはロン毛のリーダーのもとへと向かいます。

 

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リーダーも違った意味で覚醒してしまったのかmapperでした。

 

彼はヴィヴィアーヌを変わった形をした木の下に誘います。

(ちなみにリーダーの前面はボカシが入っておらず丸見えです。役者って大変です)

 

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その木の枝の先がポコっと外れます。

枝の中から白いとろりとした液体が流れてきました。

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これって…

 

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お互いにその液体を飲み、

 

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ヤるんですね。わかります。

 

そうだハリウッドが悪いのだ。我々に起承転結という概念を植え付けやがって映画なんてなあ起起起承そして力技の結でええんじゃあー!(早口)

 

<谷はどこ?>

コンボガ部族の地から離れ、奥地を彷徨う面々にまた違う(?)部族が「谷はあっちだ」と教えてくれます。

1時間32分26秒経過

 

ひらけた場所に出ました。

 

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私が訊きたいわーーーーーっ!!

 

リーダーいわく「山をひとつ超えてもまだはるか先」とのこっとっ~♪

1時間33分16秒経過

 

この先は徒歩でしか行けないというので、馬たちを放すことに。

 

リ「ここで放せば自分たちの家に戻るだろう。賭けだがな」

(人間のエゴに振り回される動物たちpart.2)

 

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徒歩でジャングルのなかを進みます。
(本作が撮影隊の良い思い出になっていると良いが)

 

少年も「いつ着くの?もう嫌だよ」とぐずり始めました。可哀想…

 

またもやひらけた場所にでました。

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ピンク・フロイドはじまた。

 

霧がすごいです。

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もう少年は限界です。

女のひとりも高山病に罹ってしまい、まともに歩けなくなりました。

オリヴィエは「もう助からないかもしれない」と覚悟します。

食料も水も底を尽きました。

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ひとりひとりと倒れていきます。

 

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すわ全滅かと思いきや…

ヴィヴィアーヌ(ひとりだけ元気なような。超人か)が下を見下ろします。

 

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え?!

 

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何その天からの光!加工!?

 

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あ、ほんとだぁ~

(ひとりだけ違う方向を見ている気が)

あそこにある~

 

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ギターの音が鳴り響きます。

 

fin

じゃねええええええええよ!!!

 

罪もないピンク・フロイドを一瞬嫌いになりそうになってしまいました。

 

<蛇足>

ピンク・フロイドは本作のサントラをレコーディングした後、本作の制作会社と揉めて(人間は一番何に揉めるかというと金です。だから金の問題でしょう。今の職場に入社してから何かを悟ったぽんず。いやしかし、今回の場合は本作の出来に納得いかなかったのかもしれないバンド側が…)

サントラのタイトルを「ラ・ヴァレ」ではなく「雲の影(Obscured by Clouds)」として発表。

本作の制作会社はピンク・フロイドを一番に宣伝として使いたかったのか、公開時に副題をObscured by Cloudsとした。おしまい。

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f:id:jijiarex:20211221145135p:plain怪抱ぽんず

でもいうほどピンク・フロイドじゃなかったような気がするんだが全体的に…