自恃があればよい

猟奇怪作珍作B級Z級映画や事件を雑に吐き散らしていく

【アニエスv.によるジェーンb.】の巻

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アニエス・ヴァルダ監督がジェーン・バーキンをこよなく撮ったドキュメンタリー(?)「アニエスv.によるジェーンb.」を観ました。

<大昔に一度観賞済みだが、99.9パー忘れてた>

バーキンが30歳の時にロンドンで酒呑んで便器にゲロ吐いた、というハナシから始まる本作。

さて、

ドアーズの「The Changeling」が流れるなか、バーキンバーキンを片手で肩にかけ、ズカズカとさっそうと歩くという“格好いい”オープニングから始まります。

やはり、バーキンバーキンにしか似合わん。

因みに“Changeling”は取り替え子という意味で、妖精が人間の子供を連れ去る時に代わりに妖精の子供を置いていくというヨーロッパの伝承があるのです。

バーキン人間界に置き去りにされた“妖精の子”なのだ。

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アニエス・ヴァルダの「冬の旅(さすらう女)」を観て、バーキンがファンレターをヴァルダに送り、その手紙が"判読不能"だったことから、「直接会おう」となり、公園を二人で歩いていたら、

バ「私、40歳になっちゃう!」   
ヴァ「何馬鹿なこと言ってんの。美しい年齢よ。人生のポートレイトを撮るのに最高のタイミングね」

と、言ったことから本作の構想が始まったらしいです。


私はてっきり、バーキンはフランス暮らしがとても長いといえど、元は英国圏の人なのだから文法が分かりにくかったのかな?と思っていたのですが、違っていました。

「判読不能」って(笑)。
英語版ウィキにはそのあとに「chicken scratch」という単語が出てきて、deep Lにも翻訳が出てこなかったのですが、調べてみると「読みにくい筆跡、すさまじい悪筆」という意味の単語でした(笑)。

私も字が汚いですが、字が汚い私はただの字が汚いド中年なだけですが、

バーキンが書く字が汚いって、どうしてこんなに可愛く思えるのか。不公平ではあるまいか。

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やはり、神はいません。これからもFAITH NO MORE

まあ、そうはといっても、フランス在住がバーキン並みに長い御方のブログを読んでいますと、

バーキンのフランス語はとても独自なものなのだとか。バーキン語”と云っていい、と
仰っていました。
バーキンの周囲にいる人達も、それも魅力のひとつなのだから彼女には「直さなくていいよ」とアドバイスしていたようです。

私も本作を観直していて、ちょっとビックリしたというか。
フランス語の言い回しなどは私には分からないことですが、バーキンの言葉のチョイスが…
なんというか、“キザ”は言い過ぎだなあ悪い意味で、何だろう…

ポエム?

というか、「普段からそんな詩みたいな文章を口にしてるんか」と驚きましたね。
横でヴァルダが普通に会話をしようとしているから、余計にそれが際立つというか。
なので、バーキンの手紙の内容も映画の感想なのか、いきなり詩を送りつけてきたのか、ヴァルダにとっては分からなかったかもしれません。

そして、バーキンの“コーヒー”の言い方がどちゃくそ可愛いんですよ。

こふぃこふぃ

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って言うんです。なんだそれ!!!爆裂キュートじゃねえか!!あと、基本的に声が可愛いですね、バーキンは。

いやしかし、ヴァルダの「冬の旅」が1985年公開で、本作(と姉妹作である「カンフー・マスター!」バーキン原作ヴァルダ監督)の公開が1988年ですからね。
撮るスピードとフットワークの軽さに尊敬します。


バーキン的宇宙>

さて、

本作は典型的なファムファタルジャンヌ・ダルク、カラミティ・ジェーン、アドリアネ、ローレル&ハーディ等々を演じる寸劇を挟みつつ、マリリン・モンローの唄をうたいつつ、
「一番演じたくない」というスパニッシュ・ダンサーの恰好して踊ったりしつつ、

インタビューをも交えていくという、バーキン濃度120万ppmな作品です。

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(パイを投げつけられる男装したジェーン・バーキン情報量多し)

本作で印象深いシーンのひとつは何といってもコレではないでしょうか。

バーキンバーキンの中身です。

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もういっちょ!!

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がささっ!

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(横の人「・・・。」)

どうしてそんなに荷物が多いのか。

というより、彼女の荷物の多さのためにエルメスの社長が作ってあげたんだから、そりゃ多いよねっていうハナシである。

今から数年前に、エルメスはワニを生きたまま皮を剥いでるという報道を受けてバーキンはバッグから自分の名前を外すよう抗議をしたのですが、どうやら誤報だったようで双方和解に至ったらしいです。

良かった。良かった。

だってバーキンバーキンでなくっちゃあ!!

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バーキン 定価100万円から物によっては600万円。一般人が手に入れようとするとプラス50万円上乗せらしい…600万っておい、ヴェゼルの中古が3台買えるぞ!)

まあ、私は1つも持っていないので愛着もも無いのですが…。

P.S.スマスマでキムタクにあげたバーキンバーキンが足で踏んづけてた姿が懐かしい。


<記憶を逡巡>

さて、

このバッグの中身をずさー・シーンですが、私の記憶では、バーキンはその荷物の中から何十本ものペンを取り出して、なんかの資料に試し書きをしてた記憶があるんですけど…。
(書けないペンと書けるペンを分けてた)

そのシーンが本作に無いんですよね。確か、鞄に貼ってるシールの説明もしてたはず。

無いシーンといえば、バーキンが(今現在も続けているか分からないですが)医療施設(病院?)に行って週に1~2回?「時間がある時はボランティアしてる」と言っている場面。

これらの場面が収録されているのって本作とは違うドキュメンタリーなのかな?…

バーキンのこれまでのキャリアを追う場面も観たような)

けっして、私が見た夢ではあるまいし。
バーキン限定の細かいシチュエーション夢ってニッチ過ぎんか)

バーキンのフィルモグラフィを調べても分からなかったです。

そうそう、あと、バーキンって白アスパラガス食べてたよね、ってアルコールでひたひたの脳を懸命に動かしてたら、分かった。

「ジュ・テーム・ノワ・モン・プリュ」の場面だ。


www.youtube.com

大昔にこれを観て以降、スーパーで“ホワイト・アスパラガス”と目にする度に「バーキン…」と思ってしまうんですよね。
私からするとバーキン=野菜、なんですよね。


バーキンの家>

野菜といえば、本作では料理をするバーキンが見れます。

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(揚げ物もしていました。油が飛び跳ねて叫んでました。どこの家も同じだ)

バーキンの料理番組を制作したら成功する、必ず。

また、バーキンの家の配色が暗めというか、とても落ち着く感じで良いなと思いました。

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白ユリが好きだと言っていました。
(剥製を置きまくってるのは風水的にどうかと思うが。すみません、風水に執着する親に育てられたもので。)

家といえば、本作にはバーキンの家族も出ています。

兄のアンドリュー・バーキン

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(何の説明もなく出てくるから最初は「誰だこのグランジくずれは…」と思ったわ。彼が監督した「セメント・ガーデン」私好きです。主演はシャルロットと兄バーキンの息子のネッド・バーキン。良い映画ですよ)

 

と、お母さん。

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(お母さんのジュディ・キャンベルは女優さんです。)

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お母さんはとても綺麗な人ですね。


お父さんのバーキン中佐。

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お父さんは軍人さんですが、バーキン家はかねがね芸術一家です。

 

もちろん、三女のルゥ、

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次女のシャルロット、

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もチラっと出ています。

(シャルロットの好きなビデオは「禁じられた遊び」と「風と共に去りぬ」というトリビアも知れました。)

<棄てられたんじゃない、こっちから棄ててやったんだよ!>

さて、

アリアドネを演じた場面のあと、ヴァルダがバーキンに言うんですよね。

「アドリアネはあなたに似ているわ。頭の回転が早く、知的で、美しくて男を惹きつけるのに、いつも棄てられてしまう」

え?

バーキンはニコニコと「私もアドリアネ好き」と言っていましたが。

え?失礼では…

というか、何故バーキンが棄てられていると思うのか。
棄てられてるんじゃない、バーキンが棄ててんだよ!!

と一瞬、映画史に名を刻んでいる天才監督に怒りが。いけない、いけない、落ち着け私…。

ふぅ。

バーキンといえばセルジュ・ゲンズブールですが。
(本作の字幕では何故かセルジマってなっていましたが)

バーキンゲンズブールのますます悪くなる酒癖の悪さとDVに耐えられなくなって、子供たちを連れてホテルに逃げたんですね。それで破局したんですけども。

私は偉いなあと思いましたよ。そんな男なんか棄てちまえ!ってやつですな。

ゲンズブールのおかげでスターになったのはヨコに置いとくとして。

まあ、シャルロット曰く、バーキンも大酒呑みだったらしいし、ゲンズブールに負けてはなかったらしいですが。
離婚後和解した後も、子供に会いに来たゲンズブールと皿を投げ合う喧嘩をしていたらしいです。

強  く  て  好   き


(シャルロットって幼児期苦労してるよなあ)


ゲンズブールは晩年には肝硬変にまでなった人なので、飲酒量はバーキンの比じゃない
くらい凄まじかったろうな、と。
バーキンと別れてから更に飲酒量が増えたらしいんですが)

シャルロット曰く、「父はお酒を呑んで暴力をふるうことはしなかった。むしろ呑んでると優しかった」
とも言っているのですが…どうなんでしょうか。ちょっと不明な点が多いです。

んで、

ゲンズブールの後がドワイヨンですよね。

ネットの噂では、バーキンとドワイヨンの関係をもろ映画に取り込んでバーキンが嫌になったとか。
(しかもその映画の主演を娘のシャルロットにさせている)

真相は闇の中だが。

しかし、男がバーキンの元から去るんではなく、バーキンが男の元から去る、そんな感じがします。

若すぎる頃に結婚した最初の夫のジョン・バリーは別として。
でも、別れた後、彼女は英国にとどまらずフランスにふらっと来たのが凄いですよね。

「去る」というより「移動」に近い感じ?


<そんなこんなでレオ登場>

私は完璧に忘れてましたね。本作にはジャン=ピエール・レオが出ていることを!!!

(むしろ、レオ目当てで大昔に本作を観たんだった)

最近は「レオ」表記なのか?昔は「レオー」だったような…

大昔の大昔、時は明治時代、私がレオが大好きで個人でやられているレオのファンサイトをよくチェックしていたんだが、更新が無くなってしまい、サイトの掲示板が出会い系の人たちのメッセージ交換になってしまった悲劇を忘れないよ。

 

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本作でレオは、マーロン・ブランドより出演料が安く、一見して傷だらけと分かり、いかにも破滅型の人間という丁寧な説明付きで登場(コーヒー噴いた)。

 

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バーキンとレオが外でピクニックしている国フランス)

 

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(二人が揃うとシュールが起こる!)

レオはバーキンに「君は僕の夢を見ないのか!僕を愛してないんだな!」

とか何とか無茶苦茶なことを言って立ち去りました。

全てがレオ過ぎて再びコーヒー噴いたね。

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(レオおおおおおおおお!!!!)

<ド天然ではない>

本作は、40歳の誕生日の前日に最終場面を収録して終わりです。

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(冒頭に30歳の誕生日の話をしたのはこのためなんですね。)

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いつもニコニコ、可愛い、皆から愛されているバーキンなのであります。

 

可愛い、可愛い云うてますが、彼女は2011年の東日本大震災のあと早い時期に来日をして震災支援のチャリティ・コンサートを開いています。
税関で本当に来日するのか確認されたようです。

それに、フランス在住の御方のブログによると、アメリカに亡命していたミャンマー
元首相のセイン・ウィンがフランスのサルコジ元大統領に民主化運動の支援を求めてパリにある大統領官邸を訪れたときに同行していたのがバーキンだったそうです。

会談前の記者会見では、バーキンが自ら仏・英語の通訳をかってでたようです。
2007年のハナシです。

その他に、バーキンチェチェンに対するロシアに抗議をしたり、アフガンやコソボの女性たちを支援する運動に関わっているようです。

私はバーキンのことをそこまで追いかけている人間ではないのですが、
(むしろニワカ。こんな記事を書いても良いのかというレベルのニワカである。)

彼女のファンからすると、ゲンズブール時代のバーキンは彼女のキャリアの中でも特殊なんだよと言いたいかもしれませんよね。


<最近までのバーキン

バーキンは現在75歳ですが、2017年(当時72歳)の記事には、46歳で亡くなった長女ケイトの死から立ち直ろうともがいている様に見える彼女の姿が伺えます。

ジェーン・バーキンが3人の娘に伝えたいことー離婚、病気、娘の死、様々な葛藤を乗り越えて (fujingaho.jp)

ケイトは事故なのか、自殺なのか分かっていないようです。
バーキンは非常に傷つき、4年間は自宅にほぼ引きこもっていたようです。

ケイトの死についての曲もあります。歌詞がとても悲しいです。

「私の娘は地面の上で見つかった」とかそんな歌詞で…。

ググってくれ。

(今回の記事も長すぎて歌詞が貼れん)


www.youtube.com

上に貼った記事を読むとシャルロットがバーキンのドキュメンタリーを撮っているようですね。

バーキンの体調も本調子じゃないようですね。持病の肺水腫…?
(2021年には軽度の脳卒中にもなっています。…ていうか、夏の京都は灼熱だぞ…

幼児期から思春期にかけて、シャルロットはなかなかの葛藤があったろう。
(雑誌のインタビューとか読んでてそう思う。)
母親と自分の関係性を見つめ直したかったのでないだろうか。

そのドキュメンタリー「Jane By Charlotteは2021年には母国フランスでは公開
されているんだが、日本でも公開してくれ。


www.youtube.com

2022年の今年は、どうやらバーキンはヨーロッパをまわるツアーがありますね。

(ググった)

凄い。精力的に音楽活動は続けているようです。

というか、バーキンはずっと音楽活動を続けていてアルバム出し続けてますよね。

何枚か買ってみましょうか、と思いました。

バーキンには健康でいて欲しいですね。

体調も問題なくこれからも健康でいて欲しいですよ。無理に長生きして欲しいなんて言わないからさ、な~んて思っちゃいました。


うん、人ひとりの人生を記事1個にまとめるなんて出来ないし暴挙だわと気づいたのでこれにて閉店ガラガラ。


<追記>

本作には美しいシーンが沢山ありますよ。特に印象に残ったのは、

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この鏡を使った場面。

 

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砂に埋もれてるバーキン

バーキンはふとした瞬間に凄く寂しそうな表情をするんですね。

亡くなった長女ケイトが長年アルコールと薬物依存症の治療を受けていた(亡くなる前には抗うつ剤も飲んでいたらしい)らしくって、それだけじゃないとは思いますが、バーキンって世間一般が思うような「いつも幸せ!はっぴっぴー!ニコニコ(。◕ ∀ ◕。)」な人じゃないと思う。

けっこう、本心とか本音とか簡単には見せない人なんじゃないかな。

影があるというか。人から持たれている自分の“イメージ”を演じ続けているというか。

と、そう思った瞬間からバーキンの掌の上で転がされてますよ!!

 

コロコロコロコロコロコロ~っ!

ああああああ~~~~~~(悶)

バーキンに弄ばれてみたいーーー!

本作を観ててそう感じました、ぽんずは。

 

f:id:jijiarex:20211221145135p:plain怪抱ぽんず